トヨタがEV世界大手のテスラと決別しEV独自開発に本腰、FCVとの二正面作戦へ

 トヨタがアメリカのEV(電気自動車)メーカーのテスラと「決別」した。

 2010年5月に資本・業務提携し、EVの共同開発を進めていたが、両社の思惑がすれ違い、このほど正式に資本提携を解消した。

◎EVに出遅れてテスラと提携

 世界トップのトヨタが、まだ海の物とも山の物ともつかないテスラに5000万ドル(約55億円)を出資し3.15%の株式を取得したのは、トヨタが日産などに出遅れたEVの技術をEVで先頭を走っていたテスラから学ぶべきことが多かったからだ。

 ただ当時、トヨタは究極の環境車としてFCV(燃料電池車=写真)を位置づけ、市販を間近にしていた。EVは、走行距離の短さと充電時間の長さ、スタンドの不備で、実用にならない、と判断していた。テスラとの提携は、あくまでも万一の場合の保険という位置づけだった。

 テスラも、自動車メーカーの雄のトヨタとの提携は、自動車製造のノウハウを得られる上、新規資金も獲得でき、メリットがあった。

◎14年に提携にひび

 実際、テスラは得た資金を基に、トヨタがGMとカリフォルニア州で共同運営していた工場「NUMMI(ヌーミー)」を買い取り、EV工場に転用した(写真=テスラの工場)。

 トヨタも提携後、とりあえずテスラの電池を搭載したSUVを発売した。

 しかし14年に、提携にひびが入る。自動車開発で優先する項目の違いなどから、テスラはトヨタに電池の供給を止め、トヨタもテスラ株の一部を売却し、「脚抜け」に踏み出した。

◎EV、意外の普及化でトヨタもEVに参戦

 従来からトヨタは、前述のように究極の環境車としてゼロ・エミッション・カーであるFCV、つなぎとしてPHV(プラグインハイブリッド車)を重視してきた。EVには、ずっと慎重だったと言っていい。

 ところがFCVの燃料である水素はガソリン以上に慎重な取り扱いが不可欠なため、水素供給スタンドの建設費が高く、普及が進まない。一方でEVの急速充電スタンドは、設置が安価で、また安全であるため、今やショッピングモールやスーパーなど車の集まるあちこちに設置されるようになっている。

 そのせいか、ヨーロッパやアメリカ、中国では、EVがかなりのスピードで売れ始めている。

 トヨタも、FCV一辺倒では世界の潮流に立ち後れるというリスクを感じ取ったのだ。

◎昨年末、社長直轄のEV開発組織を作る

 そこで昨年12月には社長直轄のEV開発組織を設置し、デンソーアイシン精機などのグループ部品企業ともに、本格的な量産に向けてのEV開発に乗り出している。

 EVは、高性能の電池さえあれば、モーターは既存の部品を転用できるので、開発はそう難しいことではない。自動車メーカーとしての総合的な技術蓄積も、活かせる。

 協業のメリットはなくなり、テスラ株式を保有している意義が失われていたとトヨタが判断したのも当然の成り行きだろう。

 むしろテスラの全株売却は、テスラは協業相手としてよりライバルとして意識したということだ。今後、EV開発と市場投入に全力を挙げることだろう。

トヨタは多額の売却益を得る、さすが

 一方で、さすがトヨタである。転んでもただでは起きない。

 株式投資として見れば、トヨタは大儲けした凄腕の「投資家」である。ITブームの一環でテスラ株は今年になって急伸し、売上高が100倍も多いGMとフォードの株価を時価総額で追い抜いた。5000万ドル(約55億円)で取得したテスラ株の売却で、1000億円近くの売却益を得たと見られるからだ。

 未来の環境車=ゼロ・エミッション・カーが、EVかFCVか、まだ見通せない。トヨタは、両睨みの姿勢に転じたが、本音は実績を積み上げたFCVだろう。

 ただそれには古くて新しい問題、燃料供給インフラの整備という大きな課題が待っている。

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